
朝、洗面台で顔を洗おうと前かがみになる。
靴下を履こうと身体を倒す。
床に落ちた物を取ろうと手を伸ばす。
その瞬間、
お尻から太ももの裏、ふくらはぎへビリッと痛みやしびれが走る。
身体を起こすと少し楽になる。
このような症状があると、
「腰を曲げたから坐骨神経が伸ばされたのかな?」
と思うかもしれません。
でも、前かがみで脚に症状が出る理由は、それだけでは説明できません。
西荻窪南口きりん堂接骨院では、
「前屈できる・できない」よりも、“前屈すると症状がどこまで広がり、戻すとどう変化するか”
を見ています。
前かがみは「腰を曲げる」だけの動作ではありません
床の物を取るとき、人の身体は腰だけを曲げているわけではありません。
腰椎が曲がる。
骨盤が前へ傾く。
股関節が曲がる。
膝が少し曲がる。
身体の重心が前へ移動する。
こうした動きが組み合わさっています。
ところが、
股関節があまり動かず腰ばかり曲がる人もいれば、
反対に腰をほとんど動かさず股関節中心で前へ倒れる人もいます。
見た目は同じ「前かがみ」でも、
身体の中では違う動きをしている
ということです。
「痛くなった」より「どこまで症状が移動したか」
ここが今回、一番重要なポイントです。
例えば前屈する前は、
右のお尻だけが重い。
身体を前へ倒すと、
太ももの裏まで痛む。
さらに深く倒すと、
ふくらはぎまでしびれる。
身体を戻すと、
ふくらはぎのしびれは消えて、お尻だけに戻る。
こうした場合、
単純に、
「痛みが5から7になった」
と評価するより、
症状が身体の末端方向へ広がったのか、それとも腰・お尻側へ戻ったのか
を見る方が役立つことがあります。
坐骨神経痛は、腰仙部の神経根への刺激・圧迫に伴う下肢痛として使われる言葉で、痛みだけでなく、しびれや筋力低下を伴う場合もあります。
洗顔は痛いのに、床の物を取るのは平気?
患者さんに、
「前かがみで痛いです」
と言われたら、
どんな前かがみなのかを聞きます。
例えば、
洗顔
膝をあまり曲げず、腰や股関節を使って前へ倒れる。
靴下を履く
片脚を持ち上げながら、腰と股関節を曲げる。
床の物を取る
腰だけでなく膝も曲げられる。
同じ前かがみでも、条件が違います。
「顔を洗うと痛いけれど、しゃがんで物を取るのは平気」
という人がいるのはそのためです。
こうした違いは、
どこを変えると症状が変わるか
を考えるヒントになります。
前屈の「途中」なのか「戻すとき」なのか
もう一つ見逃したくないのが、
前へ倒すときは平気なのに、身体を起こすときに痛い
というケースです。
前へ倒れる。
↓
床の物を取る。
↓
身体を起こそうとする。
↓
お尻から脚へズキッ。
この場合、
「前かがみが痛い」
という表現だけでは、実際に痛みが出る瞬間とズレてしまいます。
だから、
倒す途中
一番下
戻し始め
まっすぐになる直前
のどこなのかまで分けます。
膝を曲げると楽になるなら?
洗面台で膝を伸ばしたまま前屈すると痛い。
でも、
少し膝を曲げると楽になる。
あるいは、
片脚を少し前へ出すと変わる。
このような場合、
身体の曲げ方を変えたことで、
腰・骨盤・股関節・脚への負荷も変わっています。
そのため、
「前屈は禁止」
と一律に考えるのではなく、
どんな前屈なら症状が出にくいのかを探します。
「神経を伸ばせばよくなる」とは限りません
脚にしびれがあると、
「神経が硬いからストレッチしましょう」
と考える方もいます。
特に、
長座でつま先へ手を伸ばす。
前屈して太ももの裏を強く伸ばす。
といった方法です。
しかし、前屈するほど脚への痛みやしびれが強くなる方が、
症状を我慢して同じ方向へ何度も強く伸ばす
必要はありません。
まず確認したいのは、
「どこまでなら症状が増えないか」
です。
一般的な坐骨神経痛では、長時間安静にするより可能な範囲で日常活動を続けることが勧められますが、症状を強く悪化させる動作を無理に反復するという意味ではありません。
当院では一度前屈して終わりにはしません
西荻窪南口きりん堂接骨院では、
前屈時の坐骨神経痛を見る場合、
まず普段通り身体を前へ倒してもらいます。
そこで、
最初に症状がある場所
を確認します。
その後、
少し前屈する。
さらに前屈する。
身体を戻す。
再び立つ。
という流れの中で、
症状の場所がどう移動するか
を見ます。
さらに必要に応じて、
-
腰椎の動き
-
骨盤
-
股関節
-
お尻周囲
-
下肢の感覚
-
筋力
-
左右差
-
座位
-
立ち上がり
-
歩行
なども確認します。
腰を触ったから変わった、では終わらせない
身体の状態に応じて、
関節モビライゼーション、筋膜へのアプローチ、トリガーポイント療法、カウンターストレイン、メディカルマッサージなどを組み合わせます。
その後、
もう一度、最初につらかった前屈を行います。
そこで見るのは、
「腰が柔らかくなった」
ではありません。
例えば、
最初は太ももからふくらはぎまでしびれた。
再テストでは、お尻付近だけになった。
あるいは、
同じ深さまで曲げても症状が増えなくなった。
こうした、
症状の範囲・出る角度・動作後の反応
を確認します。
NICEでも、腰痛・坐骨神経痛に対する徒手療法は、運動などを含む治療計画の一部として用いることが推奨されています。
日常生活では「腰を曲げない」より、曲げ方を変えてみる
前屈すると痛いからといって、
生活から前かがみを完全になくすことは難しいです。
顔を洗う。
靴を履く。
物を取る。
掃除をする。
毎日の生活で必要になります。
そこで、
例えば、
洗顔なら膝を少し曲げる。
床の物なら、身体だけを倒さず膝も使う。
靴下なら、無理に前屈するのではなく脚を支えられる位置を探す。
というように、
痛みを増やさない動作を探します。
目的は、
「腰を絶対に曲げない身体」を作ることではありません。
必要な動作をできるだけ負担を増やさず行えるようにすることです。
「坐骨神経痛」で済ませてはいけない症状
お尻から脚へ痛みやしびれが走る場合でも、
次のような変化があれば医療機関での評価を優先してください。
-
脚の力が急に落ちてきた
-
足首やつま先が上げにくい
-
両脚に強い痛みやしびれがある
-
股や肛門周辺の感覚がおかしい
-
尿が出にくい、尿を漏らす
-
排便の感覚・コントロールがおかしい
-
神経症状が急速に悪化している
特に、両脚の進行する神経症状、会陰部の感覚異常、排尿・排便障害は緊急性のある状態でみられることがあるため、速やかな医療機関での評価が必要です。
「前屈すると痛い」から、もう一歩先へ
前かがみで脚に痛みが走る。
ここで、
「腰が悪い」
と結論を出すのはまだ早いです。
見てほしいのは、
どこから症状が始まる?
どこまで広がる?
どの角度で出る?
身体を戻すとどこまで戻る?
膝を曲げると変わる?
という変化です。
さらに、
洗顔ではどうか。
靴下ではどうか。
床の物を取るときはどうか。
同じ「前かがみ」でも答えが違うことがあります。
坐骨神経痛を考えるときに大切なのは、
一回の痛みの強さだけではなく、動作によって脚の症状がどう変化するのかを見ること。
次に前かがみで症状が出たときは、
「痛かった」で終わらせず、
お尻・太もも・ふくらはぎ・足先のどこまで症状が動いたのか
にも注目してみてください。
その変化が、身体の状態を考える重要なヒントになります。
坐骨神経痛シリーズ
▶ ① 朝起きたときにお尻から脚が痛い方
▶ ③ 立ち上がるとお尻や太ももが痛い方
▶ ④ 歩くとお尻から脚が痛い方
